何なのだ。何故そんな眼をしているのだ。得体の知れない恐怖に怯えているような、それでいて隠しきれない憎悪が向けられているような。震える唇から漏れる吐息が空気を白く濁しては霞んでいく。ギリ、と奥の歯を食いしばった。その瞳は未だこちらを捉えたまま。荒い呼吸と共に上下する体は、今にも倒れてしまうのではないかというくらい不安定だ。だが、真っ直ぐに刺さる視線が外されることは決してない。ああ、どうしてそんな眼を向けてくるのだ。それを見ていると何故か心が痛くなる。やめろ、見るな、見るんじゃない——

「飢えた獣、め」

 彼女は私を見続けて、言った。

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