窒息

 沢山の人が虫のように蠢いているのは高い高いビルに囲まれた小さな陸地でそれは陸とすら言えるのか分からないけれどそんな灰色の地面に降り注ぐ熱をこれでもかというようにはね返され苦しそうに額を拭うのは頭のてっぺんだけを黒くした奇怪な髪の少女のようなそうでないようなとにかくそんな同じ見た目のやつらがだらしなく股を開いては地べたに座り暑い暑いとこれまた同じ台詞を繰り返し行き交う人混みを眺めているがそのうち何かを見つけるとそれまでの態度はどこへやら急に元気になって向かって行った先にいたのは毎日がこの世の終わりだとでもいうようなほどの暗い顔をした冴えない男で来たるクローンの軍勢を見付けるとサッと目を逸らし進行方向を変えたもののあまりに急だったからか後ろにいた小さな女の子にぶつかってしまうと丁度持っていたアイスクリームがバランスを崩し地面へと落ちてしまったが幸いなのか男のたいして良くもない服は汚れることがなくそれ故に少女だけが失ってしまった白い塊を見て今にも泣き出さんとしているのをなだめるはずの母親は着いておらず無数のガヤの中にうわああんと悲鳴だけが響くのを見て僕はその他大勢と同じように目を逸らしたのであったが、

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